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カスタマーレビュー
おすすめ度:
歴史書を読み慣れた人には読みにくい?
(2008-07-07)
作者の思い入れが強すぎるせいか、そののりについていけない人には、かえってはじき出されるような疎外感があります。
一般的な歴史書の淡々とした記述の方が早く読める方には、この小説仕立ての本は、ものすごく読みにくいかもしれません。
チェーザレの人生については、同じ作家による『ルネッサンスの女たち』の中のルクレツィア・ボルジアの項目でおおまかに理解できますし、その方がわかりやすいようです。
ダンディズム
(2008-05-08)
実際のところ何を考えていたのか?は分からないのですが、塩野さんの推察(恐らく多大なる資料からの!)から立ち上るチェーザレ・ボルジア像です。
目的の為(が、自身の野望なのか、はたまたそれを達成した暁に実現する事のできる崇高なる何かなのか)の手段をより現実的に、または常識に捉われずに判断する事難しさとその判断に伴う重みを瞬時に受け入れる覚悟を持つ(!あるいは、無かった事にする!)、野望ある人物の物語です。ですから、非常に魅力的でもあり、恐ろしくもあります。私が考えるには、自分勝手な野望の為に使えるものは父の権威だろうと、妹の結婚であろうと、あるいは、1度ならずとも共に手を結び、戦った人を裏切ろうと、自身においての正義でも、もちろん相手には都合の悪い物事であろうとも、です。そのチェーザレの都合、見方に面白みを感じました。が、当然嫌な男でもあります。裏切りを行った相手に裏切られるチャンスを与えてしまう事は、たとえそれが病気であったとしても、自身のミスと私は考えます。野望に沿って行った事を、行われた相手からされるのはまさに、仕方の無い事です。
物事には秩序や常識があり、それを壊す事も必要です。壊す事のできる人物は壊した後は個人的には引き下がるべきと考えます。何故なら壊した後の秩序を壊したものが作ることはエゴの押し付けに他ならないと考えるからです、たとえかなりの正義なり、正しさが含まれようとも。塩野さんの非常に強い憧れなり、シンパシーを感じる人物なのでしょうけれど、面白くはありましたが、私には、シンパシーまでは感じませんでした。チェーザレが亡くなった後、彼の壊した秩序を利用した、または新たな秩序を立て直すのに苦労する事になったであろう部分の歴史が気になります。裏切り、テロ、毒殺などは行うことは簡単ですが、その先が非常に難しい世界になってしまうことを私たちは知ってしまいましたから。
しかし、それでも、チェーザレ・ボルジアという人物には確かにひきつけられます。傭兵(お金で雇われた戦闘をする軍人)だけの世界から、自身の地域(あるいは国)を守る為の兵の必要性を考えたり。塩野さん以外の方のチェーザレ像がきになります。
イタリア史に興味のある方にある種のダンディズムに興味のある方に、もちろんチェーザレ・ボルジアに興味のある方にオススメ致します。
ボルジアの悪いイメージが払拭
(2008-04-07)
ボルジアというと「毒」がキーワードだが、塩野はそうした悪評や風評を完全に覆し、説得力ある歴史物語としている。
たとえば、本書で登場するマキャベリは、教科書では「独裁者」とか冷酷非情といわれていたが、決してそんなことはないようだ。ダビンチだって、ただの画家ではなく、都市建設設計者として登場する。しかも、2人ともチェーザレを慕い、尊敬さえしている。まさに目から鱗の感じだった。
日本史にしても世界史にしても、日本ではバイアスがかけられているようだ。歴史認識を正しくもてない民族や国は早々に滅びるものである。
本書はそうした警告も含めた力作といえる。
塩野七生の冴えた目で描くチェーザレ
(2007-11-13)
織田信長にもよく比較されるイタリアの覇者チェーザレ・ボルジア。知られていないようで知られている彼のファンは結構多いかもしれない。
おそらく塩野七生のこの作品で毎日出版文化賞を受賞し、一躍有名になってから、チェーザレの名も日本も知れ渡るようになったのではなかろうか?
ローマ法王アレクサンデル6世を父に持ち枢機卿まで昇り詰めた彼が、美貌の妹を政略結婚の道具に使い、実の弟を暗殺の手に掛け、イタリアの統一を夢見て駆け抜けたその波乱の生涯を淡々とした筆致で描いている。
これが女史のデビュー作でもあるせいか、作家としての支点に揺らぎがあり、それが多少作品としての不安定さを感じさせるも、チェーザレひいてはボルジア家という存在の隆盛を見事に描き出している。
メフィストフェレスの魅力
(2007-10-27)
少し前に読んだマキアヴェリの君主論から本書に興味を持ちました。君主論の体現者というよりは、むしろ君主論に大きな影響を与えた人物というのが正しいのかもしれません。チェーザレ・ボルジアは、父親であるローマ法王の権力を背景に、10年という短い期間でイタリア中部を権力下においた凄まじい人物です。冷酷なまでの判断力と烈火のごとき行動力、そして数々の疑惑をもったこの君主の物語は強く人をひきつけるものと思います。
本書の特徴は、チェーザレの心情にまでは踏み込まず、あくまで史実と多くの資料によって彼がどのような人物なのか書き出していることにあります。苛烈な野心は彼の行動から、状況を見極める冷静さは敵味方を区別する彼の政策やマキアヴェリとの会話から読み取ることができます。
また解説の沢木氏も触れているように、塩野女史はチェーザレに強い愛着を持っていることも読み取れます。これは妹のルクレツィアとのダンスの場面や最後の戦いの場面に見ることができ、いずれもチェーザレの容姿や振る舞いなどから男性としての攻撃的な魅力を感じます。
悪評の多い人物であり、私も心情的には肩入れしにく部分があります。しかしどこか心引かれる強力な熱をもった作品だと思います。
おすすめ度:
歴史書を読み慣れた人には読みにくい?
作者の思い入れが強すぎるせいか、そののりについていけない人には、かえってはじき出されるような疎外感があります。
一般的な歴史書の淡々とした記述の方が早く読める方には、この小説仕立ての本は、ものすごく読みにくいかもしれません。
チェーザレの人生については、同じ作家による『ルネッサンスの女たち』の中のルクレツィア・ボルジアの項目でおおまかに理解できますし、その方がわかりやすいようです。
ダンディズム
実際のところ何を考えていたのか?は分からないのですが、塩野さんの推察(恐らく多大なる資料からの!)から立ち上るチェーザレ・ボルジア像です。
目的の為(が、自身の野望なのか、はたまたそれを達成した暁に実現する事のできる崇高なる何かなのか)の手段をより現実的に、または常識に捉われずに判断する事難しさとその判断に伴う重みを瞬時に受け入れる覚悟を持つ(!あるいは、無かった事にする!)、野望ある人物の物語です。ですから、非常に魅力的でもあり、恐ろしくもあります。私が考えるには、自分勝手な野望の為に使えるものは父の権威だろうと、妹の結婚であろうと、あるいは、1度ならずとも共に手を結び、戦った人を裏切ろうと、自身においての正義でも、もちろん相手には都合の悪い物事であろうとも、です。そのチェーザレの都合、見方に面白みを感じました。が、当然嫌な男でもあります。裏切りを行った相手に裏切られるチャンスを与えてしまう事は、たとえそれが病気であったとしても、自身のミスと私は考えます。野望に沿って行った事を、行われた相手からされるのはまさに、仕方の無い事です。
物事には秩序や常識があり、それを壊す事も必要です。壊す事のできる人物は壊した後は個人的には引き下がるべきと考えます。何故なら壊した後の秩序を壊したものが作ることはエゴの押し付けに他ならないと考えるからです、たとえかなりの正義なり、正しさが含まれようとも。塩野さんの非常に強い憧れなり、シンパシーを感じる人物なのでしょうけれど、面白くはありましたが、私には、シンパシーまでは感じませんでした。チェーザレが亡くなった後、彼の壊した秩序を利用した、または新たな秩序を立て直すのに苦労する事になったであろう部分の歴史が気になります。裏切り、テロ、毒殺などは行うことは簡単ですが、その先が非常に難しい世界になってしまうことを私たちは知ってしまいましたから。
しかし、それでも、チェーザレ・ボルジアという人物には確かにひきつけられます。傭兵(お金で雇われた戦闘をする軍人)だけの世界から、自身の地域(あるいは国)を守る為の兵の必要性を考えたり。塩野さん以外の方のチェーザレ像がきになります。
イタリア史に興味のある方にある種のダンディズムに興味のある方に、もちろんチェーザレ・ボルジアに興味のある方にオススメ致します。
ボルジアの悪いイメージが払拭
ボルジアというと「毒」がキーワードだが、塩野はそうした悪評や風評を完全に覆し、説得力ある歴史物語としている。
たとえば、本書で登場するマキャベリは、教科書では「独裁者」とか冷酷非情といわれていたが、決してそんなことはないようだ。ダビンチだって、ただの画家ではなく、都市建設設計者として登場する。しかも、2人ともチェーザレを慕い、尊敬さえしている。まさに目から鱗の感じだった。
日本史にしても世界史にしても、日本ではバイアスがかけられているようだ。歴史認識を正しくもてない民族や国は早々に滅びるものである。
本書はそうした警告も含めた力作といえる。
塩野七生の冴えた目で描くチェーザレ
織田信長にもよく比較されるイタリアの覇者チェーザレ・ボルジア。知られていないようで知られている彼のファンは結構多いかもしれない。
おそらく塩野七生のこの作品で毎日出版文化賞を受賞し、一躍有名になってから、チェーザレの名も日本も知れ渡るようになったのではなかろうか?
ローマ法王アレクサンデル6世を父に持ち枢機卿まで昇り詰めた彼が、美貌の妹を政略結婚の道具に使い、実の弟を暗殺の手に掛け、イタリアの統一を夢見て駆け抜けたその波乱の生涯を淡々とした筆致で描いている。
これが女史のデビュー作でもあるせいか、作家としての支点に揺らぎがあり、それが多少作品としての不安定さを感じさせるも、チェーザレひいてはボルジア家という存在の隆盛を見事に描き出している。
メフィストフェレスの魅力
少し前に読んだマキアヴェリの君主論から本書に興味を持ちました。君主論の体現者というよりは、むしろ君主論に大きな影響を与えた人物というのが正しいのかもしれません。チェーザレ・ボルジアは、父親であるローマ法王の権力を背景に、10年という短い期間でイタリア中部を権力下においた凄まじい人物です。冷酷なまでの判断力と烈火のごとき行動力、そして数々の疑惑をもったこの君主の物語は強く人をひきつけるものと思います。
本書の特徴は、チェーザレの心情にまでは踏み込まず、あくまで史実と多くの資料によって彼がどのような人物なのか書き出していることにあります。苛烈な野心は彼の行動から、状況を見極める冷静さは敵味方を区別する彼の政策やマキアヴェリとの会話から読み取ることができます。
また解説の沢木氏も触れているように、塩野女史はチェーザレに強い愛着を持っていることも読み取れます。これは妹のルクレツィアとのダンスの場面や最後の戦いの場面に見ることができ、いずれもチェーザレの容姿や振る舞いなどから男性としての攻撃的な魅力を感じます。
悪評の多い人物であり、私も心情的には肩入れしにく部分があります。しかしどこか心引かれる強力な熱をもった作品だと思います。
